ライフワークスとは?

「ライフワークス」とは?

『ライフワークス』は、横浜在住の映画監督・利重剛と中村高寬がプロデュースする、横浜を舞台にしたショートフィルムのシリーズです。
「日常を生きる人々の、人生の一瞬を切り取る」というコンセプトで描かれる作品群は、どれも1話完結で、長さは5分〜15分程度。
上映のしかたは、とてもユニークで、その日上映される映画本編の前につけて、一日一回「おまけ」として無料上映されるのです。
上映館は、横浜・伊勢佐木町にある老舗ミニシアター、シネマ・ジャック&ベティと横浜シネマリンの2館。
作品は、一ヶ月間上映され、毎月新作に替わっていきます。
作品はすべて横浜を舞台に撮影され、横浜の映画館で上映されるという、純粋な「横浜発」の企画です。

このプロジェクトがスタートしたのは2014年。
2014年10月11日、横浜ワールドポーターズ15周年記念と横浜みなと映画祭との連動で催された先行上映イベントでは、初期4本を連続上映、イオンシネマみなとみらいの最大会場を満員にする大盛況になりました。
そして2014年12月27日より、シネマ・ジャック&ベティと横浜シネマリンの2館で本上映をスタート。多くのメディアに好意的に取り上げられ、順調な活動を続けています。製作準備のための2度の休止期間を挟んで、現在までに18本が制作されてきました。

おまけという魅力。

この企画の大きな魅力の一つは、「おまけ上映」です。これは、同じ映画を見るのにも、「あの映画館で見よう」という魅力になります。そしてそれが毎月新作に替わるとなれば、コンプリートしたい人にとっては、毎月一回映画館に行く理由になります。おまけがきっかけになって、「今月は何を見ようかな」と、映画館で映画を見ることが当たり前の習慣になってくれたら、という大きな夢を込めた企画です。「ちょっと待てばDVDになるだろうからレンタルで見ればいいや」というのが当たり前で、人々の足が映画館から遠のいている時代。タダであっても、そこに行かなければ見られないこの「おまけ」は、映画館にお客さんを呼び戻す起爆剤になると信じています。
このプロジェクトは映画の未来や街の未来を考える上で、とても大事な価値のあることと信じています。映画が文化であるように、映画館で映画を見ることも大事な文化です。今も昔も、映画館という場所は、街の大切な場所であるはずです。

鮮やかに切り取られる 人生の一瞬。

このショートフィルムは、よくある起承転結のドラマではありません。
日常を生きる人々の、ある人生の一瞬を、ざっくりと切り取って、差し出してみせるような作品です。
複雑なプロットや伏線、派手な導入部や仕掛けはありません。たぶんにエッセイ的。でも、そこには「感情」という強いドラマが存在し、共感があります。
作品はどれも1話完結で、長さは5分〜15分程度。
10分という短い時間でも、人生を描くことは出来ます。
この作品では、細かいシーンでストーリーをダイジェスト的に追うようなことはせず、ワンシーンを充実させることによって、濃縮された時間を見せます。O・ヘンリーのような良く出来た小品を目指すのではなく、普通に生きる人々の心のひだや些細な感情を丁寧に見つめる、いわば、レイモンド・カーヴァーの短編小説のような味わいを目指しています。

“いろんな人が、いろんな想いを抱えて生きている。
そして、自分を生きるということでは、誰もが平等で、主役なのだ──。”

これは、私たちが、一生をかけて描き続けていきたいテーマであり、ライフワークでもあります。そういう想いをも込めて、このショートフィルムのシリーズタイトルを「ライフワークス」と名付けました。

横浜という舞台。あらゆる人がいる街。

内田吐夢や谷崎潤一郎を輩出した大正活映撮影所があったその昔から、横浜は、映画と馴染みの深い街であることはいうまでもなく、映画を作るのにも、最高の舞台です。
通りを一本渡っただけで街の色が変わるほど、強い特色を持った文化がぎっしりと隣りあっている街。
開港によって独自の発展をとげた文化や建築様式、中華街をはじめとした、アメリカ、コリア、ギリシャ、タイなどの多国籍文化。
世界中から集まってくる観光客。つかの間の滞在をする船員や米兵、出稼ぎ労働者。毎朝ホームをあふれかえらせる圧倒的な数のサラリーマン。あらゆる種類の客を相手に日々を働く飲食店や商店の人々。聖書を小脇に抱えて軽やかに歩くお嬢さん学生。街角で生命力を弾けさせる大道芸パフォーマー。
優雅な時間の流れる高級住宅地も、庶民の圧倒的なエネルギーがひしめき合うストリートも、遊園地や美術館やホテルも、海も里山も、工場も団地も、歓楽街もドヤ街も、この街には、とにかくすべてが、詰まっています。
その、多種多様な文化と人生が、日々、この街で交差しているのです。
歴史も最先端も、上品も猥雑も、静寂も喧噪も、白も黒も黄色も全部ぶちこんでかきまわしてある街。それが横浜です。
すべての人が住んでいて、あらゆるドラマが起る街、横浜。
これほど、映画に向いている街は、他にありません。
埠頭で。公園で。バーで。市場で。水上バスで。スケートリンクで‥‥。
この街のどこで、どんな人生が交差して、どんなドラマが生まれるのでしょう。

これまでの監督たち 第3期目の監督たち

第1期の12本は利重剛がすべて監督し、シリーズの基本カラーとクオリティを形作りました。第2期は『アズミハルコは行方不明』などのヒットで注目される若手監督の松居大悟(『花瓶の裏』)や、カンヌ映画祭常連の河瀬直美作品のチーフ助監督を長く務めてきた近藤有希(『再会』『ストリートレース』『デビュー』)、横浜を代表する写真家の森日出夫(『グッドモーニング』)も、このプロジェクトで監督デビューしました。新しい才能への扉を開き、また映画界とは違う業界から、とても新鮮な感覚の作品を生み出すのも、「ライフワークス」の大きな目標のひとつです。
第3期は、本プロジェクトの代表でもある利重剛が継続して監督するほか、10年余もロングランを続ける実験的な映画『眠り姫』を監督した七里圭や、『-x-マイナスカケルマイナス』の伊月肇、『東京失格』『キミサラズ』の井川広太郎、『お盆の弟』の大崎章など、ドラマ以外にも、実験映画のアプローチからも、横浜を切り取って描いていきます。
3期目の大きなテーマは、「更なる拡がり」と「継続」です。作品の幅をさらにバラエティに富ませること、そして一般の方々への認知をさらに拡げて継続していくことが、大きな目標です。